蒲田の町の魅力であるテクノロジーとノスタルジーの両者が混在する情景を、宿泊をとおして体験できるホテルを計画した。商店街の一角に顔をだしたメタルメッシュのスクリーンによるアプローチを抜けると、風除室に展示された1940年代の英国製旋盤機の出迎えによって体験がスタートする。

隣のダイニングでは、国内最大級６ｍの一枚板を折り曲げて作った照明器具が吊られており、朝食時のみならず日中も人々がまわりに集えるオープンなスペースとした。

客室に向かうエレベーターホールには、大田区の町工場による最先端の加工技術（合せる、掘る、削る、折る、磨く、曲げる）を用いた階数表示を設置し、各階それぞれで職人の技をめぐる仕掛けを施した。

内装の仕上げ材に通常用いられない合板や金属波板などの工業製品を使用することで、街の持つ地域性を建物内部に引き込み、「蒲田に泊まるホテル」として場所に根ざした空間を創出した。